薫子様、一大事でございます!

「“そっち”だなんて、随分とツレない呼び方ですね。僕の名前を忘れてしまいましたか?」


記憶にすら残っていない。


……残したくもない。


DCHという通称で通してきてしまったし。


「しょうのない人ですねぇ。僕の名前は大介ですよ、常盤大介。これからは“大介さん”とでも呼んでください。あ、もしくは少々気は早いですが“あなた”でもいいんですよ?」


ゾゾっと背筋が凍りついた。


こんな人と結婚なんて、絶対に考えられない。


「僕は先に話すつもりはありません。薫子さんが先にどうぞ」


ズルイ。
話を聞きたければ部屋に来いと言っておいて。

その上、名前で呼べだなんて。

< 458 / 531 >

この作品をシェア

pagetop