薫子様、一大事でございます!
「“そっち”だなんて、随分とツレない呼び方ですね。僕の名前を忘れてしまいましたか?」
記憶にすら残っていない。
……残したくもない。
DCHという通称で通してきてしまったし。
「しょうのない人ですねぇ。僕の名前は大介ですよ、常盤大介。これからは“大介さん”とでも呼んでください。あ、もしくは少々気は早いですが“あなた”でもいいんですよ?」
ゾゾっと背筋が凍りついた。
こんな人と結婚なんて、絶対に考えられない。
「僕は先に話すつもりはありません。薫子さんが先にどうぞ」
ズルイ。
話を聞きたければ部屋に来いと言っておいて。
その上、名前で呼べだなんて。