薫子様、一大事でございます!
沙織さんがどうしてここに――?
「勝手に人の部屋に入るなと、何度言ったら分かるんだ」
DCHの口調が激しくなる。
「ごめんなさいねぇ。そんなことより、お父様から伝言を預かっているのよ」
「父さんから? で、何だって?」
「今ここで言ってもいいの?」
沙織さんが私を顎で指す。
DCHは父親という言葉の登場に、少し焦り気味だった。
「薫子さん、この話はまた今度にしましょう。珠美! 薫子さんをお部屋までお連れするように」
呼ばれて現れた珠美さんは、私に「どうぞ」と促すと、部屋の外へと連れ出した。
そして私は、そのまま元いた部屋へと連れ戻されてしまったのだった。