薫子様、一大事でございます!
「ねぇ、一つ聞きたいことがあるんだけど」
沙織さんが私の目をジッと見据える。
「早川さんの彼女ってのは嘘?」
「――そ、それは……」
言葉に詰まった私を見て、沙織さんはフッと笑みを漏らした。
「やっぱり。なんかおかしいと思ったのよね。全然恋人同士に見えなかったし」
うまく演じられたと思っていたのは私だけだったようだ。
すっかりお見通しだったらしい。
「……すみません」
「別にいいのよ。確か、大介さんが結婚したがってた“二階堂薫子”は深窓のお嬢様で、男っ気が全くないって聞いていたから。で、その二階堂薫子があなただって言うから」
「本当にごめんなさい。騙すつもりはなかったんです……」