薫子様、一大事でございます!
……あ、それは違うかな。
騙すつもりで沙織さんたちに会ったのだから。
考えれば考えるほど申し訳なくなって、身体を縮こまらせた。
そういえば、あの夜――。
ホテルのラウンジには北見さんもいたのに。
沙織さんはともかく、北見さんは沙織さんに気づかなかったの……?
「それで、その二階堂薫子さんが、どうしてこの家にいるの? 行方不明だって聞いてたけど、大介さんと結婚する気になったの?」
「――ち、違います!」
「そうよね。あんなのと結婚なんてしたくないわよね」
「あ、いえ……その……」
異母兄妹とはいえ、仮にも兄妹。
あまり人格を否定するようなことは言いたくない。