薫子様、一大事でございます!
「私が必ずここから出してあげるから。お父様に話せば、大介さんを説得してくれるはずよ」
「でも、」
常盤ハウジングの社長だって、息子の願いを聞き入れて、私を息子の嫁に迎え入れようと画策したのよね?
だとしたら、今回だって息子のわがままを聞き入れて、私をここから出すなんてないんじゃないかしら……。
「大丈夫よ。お父様は大介さんをとっくに見限ってるから」
私の不安を読み取った沙織さんが、安心してと肩を叩く。
「ちょっと時間はかかるかもしれないけど、それまでしばらく辛抱していてちょうだい」
沙織さんはそう言って立ち上がった。
「ところで、さっき聞きそびれたんだけど、涼夜さんのことをどうして知ってるの?」
ドアへと行きかけた足をもう一度私へと向ける。