薫子様、一大事でございます!
お父様もお母様も、滝山も、幸せに暮らしてる。
芙美さんも、格安家賃の店子がいなくなれば、心配の種が減る。
北見さんは、手のかかる私がいなくなったことで、肩の荷が下りたとホッとしているに違いない。
私のことを待っている人は、誰もいない。
このまま成り行きに任せてしまうのが、私の人生なのかも……。
思えば、ずっとそうしてきた。
いつもお父様の言うとおり、自分の意思も持ち合わせてこなかった。
たった一度の反発。
それが、DCHから逃れるための家出だったけれど。
今、ここにDCHといるということは、それも失敗。
ということは、私には人に言われたとおりに進む人生が最適ということなのかもしれない。