薫子様、一大事でございます!
階段のそばには、珠美さんが身体を隠すようにしてこちらを窺っていた。
軽く会釈をしてみても、相変わらずの無表情。
珠美さんは、静かに私たちを見送ったのだった。
「乗れ」
玄関前に停められたバイクを前に、北見さんが私にヘルメットを被せる。
乗れって……こんな格好で?
背中は丸出しだし、タイトなロングスカートだよ……。
これではまたがることすらできない。
「それにしても、悪趣味のドレスだな。さすがは大介だ」
北見さんは自分の着ていたジャケットを私に着せると、スカートの裾を力任せに引きちぎった。