薫子様、一大事でございます!
初めての……
「薫子ちゃん、よかった、無事だったんだね」
事務所に帰るなり、芙美さんに抱き締められた。
夜も10時過ぎ。
こんな時間まで待っていてくれたんだ……。
「心配してたんだよ。北見さんを借りていた隙にいなくなったって聞いて。私のせいだ、どうしようって」
「ごめんなさい、芙美さん」
私の背中を温かい手が優しく撫でる。
「おかえり、薫子ちゃん」
こんな私でも、待っていてくれる人がいた。
それだけで目の奥が熱くなった。
「それにしても、すごい格好だこと」
芙美さんが目尻に浮かんだ涙を拭いながら、私を見て目を丸くする。