薫子様、一大事でございます!
芙美さんの身体をクルリと反転させ、出入口へと向ける。
「おっと、私はお邪魔ってことだね。はいはい、今夜は二人の時間を邪魔したりしませんよ。再会を心ゆくまでじっくり味わっておくれ」
「――芙美さん!」
背中をグイグイ押し、北見さんはとうとう芙美さんを事務所から追い出してしまったのだった。
芙美さんがいなくなった途端、静寂に包まれた事務所。
いきなり二人きりにされて、何から話せばいいのか戸惑う。
聞きたいことも言いたいことも、山ほどあるというのに……。
「あの、」
「カコちゃん、」
意を決して発した声が北見さんと被る。