薫子様、一大事でございます!
どうぞ、とお互いに先を譲り合うけれど、結局私が先に話すことになった。
「北見さんは、常盤ハウジングの人だったんですね」
私の言葉に、北見さんは大きく長い息を吐いた。
「……ごめん。いつか話そうとは思っていたんだ。でも俺も、カコちゃんがNIKAIDOHの二階堂薫子だと知ったときには愕然としたよ」
北見さんはゆっくりとした足取りで、ソファに腰を下ろした。
肩幅に開いた膝に肘を突き、口の前で手を組む。
「俺の母親は、常盤の社長の愛人だったんだ」
「沙織さんから聞きました」
「……沙織さん?」
その名前に北見さんが一瞬固まる。
視線が宙を舞った後