薫子様、一大事でございます!

――やっぱり。

さっきの二人の様子だと、兄弟仲がいいようには見えなかった。



「1年くらい前のことだったよ」


北見さんの視線が、狭い事務所の壁を通り越して遠くへと注がれた。


父親とはいえ、それまで全く音信普通だった常盤ハウジングの社長が、ある日突然北見さんの元を訪れたらしい。

正妻の息子であるDCH(大介さん)では、会社の後継者として不安が残ると。


そこで、白羽の矢が立ったのが、北見さんだった。


自由奔放に海外を渡り歩き、アメリカでMBAを取得した北見さんを常盤ハウジングの二代目社長として迎え入れたいという申し入れだったそうだ。


当然のことながら、DCHはそれがおもしろくない。

北見さんを消そうと安易に考えた。

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