薫子様、一大事でございます!
北見さんはそこまで話すと、向かいに座る私を真っ直ぐに見つめた。
「隠していて悪かった」
「……いえ。私もNIKAIDOHのことは話せずにいましたから……」
訪れる沈黙。
それは重苦しいものではなかったけれど、なぜか見つめ続ける北見さんから逃げるように立ち上がった。
「あの、コーヒーでも淹れますね」
キッチンに立ち、お湯を沸かそうと水を出す。
ザーッという水音が沈黙を緩和してくれたものの、それでもどこか居心地が悪くて。
何か話そうと咄嗟に出たのは、思惑とは違うものだった。
「私、DCHのプロポーズに頷くところでした」
そんなことを言うつもりは全然なかったのに。