薫子様、一大事でございます!

――――――――
 ――――――

「モモ、クロ、ご飯よ」


私の一声でみゃあと鳴きながら二匹が擦り寄る。


なんとなくのんびりと過ぎていく時間。

高いビルに囲まれたこの事務所の中にも、穏やかな冬の午後の日差しが射し込んでいた。



「薫子様! 一大事でございます!」


久々に聞く滝山の口癖に、モモとクロの耳がピンとなる。


下でバイクの手入れをしていたはずの滝山は、鼻の頭を黒くさせたまま事務所へ飛び込んできたのだった。


「テレビテレビ……」


ブツブツと言いながら、リモコンを探す。

< 520 / 531 >

この作品をシェア

pagetop