薫子様、一大事でございます!
いつか戻ると言ってくれれば、安心して待っていられたのに。
「ごめん、電池切れ」
北見さんはポケットから携帯を取り出した。
――そんな!
充電器なんて、どこでだって手に入れられるはずだもの。
ニヤニヤしながら鼻の頭を掻く北見さんを軽く睨みつける。
「おっと、そうだった。私は野暮用を思い出しましたので、ちょっと失礼しますよ」
滝山がそそくさと事務所を出て行く。
それを見届けると、北見さんは私の頭に手をポンと置いた。
「怒ってる?」
「はい」