薫子様、一大事でございます!

捕獲できた自分をちょっと誇らしげに思ったりなんかして、つい笑みがこぼれる。


もしかしたらこれは、幸先がいいのかもしれない。
この猫は見つけられるかも。

ちょっとしたゲン担ぎを見つけた気分だった。


「これが何だかご存知じゃないんですか?」

「え? カブトムシでしょう?」

「……やっぱり」

「滝山が昔、絵を描いてよく話してくれたじゃない」


黒くて、どっしりとした体。

ツヤツヤとした背中は、ワックスを丁寧に塗った高級車のように。


「これはカブトムシなんかじゃございません」

「あら、それじゃ何? 別の昆虫なの?」


他にもあんな風に黒光りしている虫がいるのかと興味津々に聞いてみた。

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