薫子様、一大事でございます!
「これは害虫です、害虫」
「がいちゅう?」
そんな名前の虫だったのね。
へぇと、首を小刻みに振った。
「カブトムシがこんな街中にいるわけがないじゃないですか。まったくこれだから薫子様は世間知らずだと言うんですよ」
また始まった、滝山の小言。
何かといえば、すぐに私のことを世間知らずだと言うんだから。
確かに、世の中のことをほとんど知らずにこの歳まで育ってきたけれど、それは私の意図したことじゃない。
それだって、今こうしてやっと外の世界を見られるようになって、少しずついろいろと分かってきている段階なのだから。
私の尖った口を見て、滝山が「まぁ、仕方ないでしょう。