薫子様、一大事でございます!
第2章
密着が招いた異常事態
センスの良い調度品がさり気なく置かれた広い和室。
南に面しているせいか、燦々と降り注ぐ太陽で、夏を目前に控えた部屋は少し蒸していた。
上段がガラスになっている引き戸から見える庭は、ちょうど庭師が手入れをしている最中だった。
初めて上がった芙美さんの家は、外観から想像していた通り、一人では持て余してしまうほど大きなお屋敷だった。
「これ、芙美さんですか?」
背の低い戸棚に飾られた、一枚の写真立てを手に取った。
椅子に腰を掛け、白無垢に身を包んだ美しい女性。
そのかたわらには、ピンと背筋の通った男性が口を真一文字に結んで立っていた。
「あらやだ。変なものを見つけないでおくれよ」
芙美さんにしては珍しく、頬を赤く染めて照れる。