薫子様、一大事でございます！

……ヒーロー。


当事者の芙美さんでもないのに、鼓動がトクンと一つ鳴った。


「分かる気がします。私にはまだそんな経験はありませんけど、危ないところを助けられたりしたら、恋しちゃいますよね」

「だろう？　主人には、それは勘違いだって言われちまったんだけどね」

「勘違い？」

「なんでもね、危険を感じた時のドキドキと、恋した時のドキドキは似てるらしいんだよ。だから、私がそう思い込んでるだけだって」

「……そう、なんですか？」

「私はそうは思わないけどね。それは理論上のことであって、私は確かに恋に落ちたんだから」


だからこそ、二人は結婚をした。

芙美さんの言い分に間違いはないと私も思えた。


「……っと、肝心なことを忘れるところだったよ」


両手をパンと鳴らす。