薫子様、一大事でございます!
芙美さんが「よいしょ」と言いながら、大きなダンボール箱をズズズと引き寄せた。
今日、私がここへ来たことの本題だ。
「こんなに戴いていいんですか!?」
蓋の隙間から覗かせたのは、溢れるほどの野菜だった。
「私一人じゃ食べきれないからね。遠慮しないで持って行っておくれ」
芙美さんには、いつもこうしていろいろなお裾分けをいただくばかり。
何もお礼をできないのがもどかしい。
「ありがとうございます」
「薫子ちゃん一人で持って行けるかい? 私が届けてあげればよかったんだけどねぇ」
「いえ、大丈夫です。このくらい運べますから」
庭師さん並みに脚立に乗って植木の手入れをしていた芙美さんは、その脚立から落ちて足を捻挫してしまったのだった。