薫子様、一大事でございます!
痛めた足をさすりながら、芙美さんは「悪いねぇ」と何度も呟いた。
芙美さんの自宅から事務所までは徒歩1分。
たいした距離じゃないと高をくくっていた私。
それは、甘い考えだったということに気づいたのは、芙美さんの家を出てすぐのことだった。
思いのほか重いダンボール箱。
ぎっしりと詰まった野菜は、予想以上に重量があったのだ。
いつも芙美さんが難なく運んで見えたから、私にも持てると思ったのは大きな勘違いだった。
一旦歩道にダンボールを置いて、ふぅと大きく息を吐く。
……さて、頑張らなくちゃ。
気を取り直して、よし! とばかりにもう一度ダンボールを抱えたところで、ブルンブルンという音が後ろから迫ってきた。