薫子様、一大事でございます!
「ささ、参りましょう。バイクはこれを置いたら私が取りに戻りますから」
「……そう?」
「薫子様のご心配には及びません」
私にはどうも、力というものがないらしい。
滝山の言葉に従うことにした。
事務所へ辿り着くと、滝山はどっこいしょと荷物を置いた。
「銀さん、お疲れ様です」
両手を高く持ち上げて背伸びをしながら、パソコンから振り向いた北見さん。
膝の上にはクロが陣取り、足元にはモモが寝転んでいた。
結局のところ、黒猫の名前はクロで決着がついたのだった。
ここへ来て以降、二匹は北見さんにベッタリ。
特にクロは、北見さんのことを相当気に入ってしまったようだ。