弟、時々恋、のち狼
運動部の威勢イイかけ声を聞きながら、アタシたちは校庭の隅で円になった。


「うちは定演と卒入学の行事シーズンくらいしか忙しくないから、結構のんびりしてます。
コンクールは出るけど、西高には勝てないし」


アタシは今まで音楽には縁がなかった。
一応楽譜は読めるけど、何かを習ったことはない。授業だけ、だ。


「で、仮入部期間は今週中となっていますが、今の時点で入部を決めてくれた人はいますか?」


二三年生がじっと近くの一年生を見つめる。


「……はい」


友達同士相談する者や、軽く首を傾げる者。
その中で、アタシは恐る恐る手を挙げた。


「タキガワさん、だったよね?
では、他の人は、もし別の部も見に行くなら今からどうぞ。もう少しやってみたければそれでもイイです」


ロウが顧問の、吹奏楽部。
中学で入っていた美術部を高校でも続けようかと思ったけれど、やっぱり、少しでもロウのそばにいたい。

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