弟、時々恋、のち狼
一体、ロウにはいくつの顔があるんだろう。

澄ました顔で先生らしい話しをする姿に、そんなことを思う。

話し方と表情が変わると、まるで別人のようだ。


初めて会った日の、無邪気とも言えるぐらい明るくはしゃいだ、ロウ。
一変して底知れない怒りに震えた、ロウ。
素知らぬ素振りで教師らしく平等に接してくる、柔らかな、ロウ。

そしてー。

真剣にアタシを見つめる、情熱的な、ロウ。


どれもやっぱりロウなんだろう、とは思う。
どんなロウだってやっぱり好きだ、とも思う。


でも、夢の中で会うロウもまた、現実で会うロウとは少し違っていた。
強いて言えば先生としての顔が一番近いかもしれない。けれど、夢の中のロウはなんというか……もっと憂いを帯びていて、起伏に乏しい印象があった。


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