弟、時々恋、のち狼
この笑顔にどれほどの女の子たちが焦がれているか、アタシは知ってしまった。

こんな関係、万が一にも知られたら……優越感以上に何が待ち受けるか、考えるだけでも恐ろしい。


「もうすぐだよ」


待ち合わせの場所になるはずだった小さな薬屋の前を通り過ぎ、ロウが顔を寄せる。

アタシ、やっぱりどこかで着替えれば良かったな。

制服は目立つ。

ただいるだけでさえ、目立つロウ。

地味なアタシの顔だって、こうなれば逆に目立つかもしれないし。


「少し……離れて歩こう……?
誰かに見られたら……」


まだ真っ直ぐ目を見てしゃべるのは苦手だけれど、なんとか、会話になるぐらいにはなった。


「え?なんで?」


なのに、ロウはわざとかと思うぐらい、さらに顔を近づけてくる。


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