弟、時々恋、のち狼
「我慢できない」


荒々しく抱きしめ、ささやかれた。
耳元にかかる甘やかな吐息に、背筋がゾクッと粟立つ。


「あんなカワイイ顔されたら……。ずるいよ。襲いそうだ」


さりげなくとんでもないことを言うあたり、やっぱり大人なんだなと思う。
きっとロウは今まで、何人もの女の子をこうやって口説いてきたんだろう。

アタシなんか、ものの数にも入らないのかもな……。

少し、切ない。


「意地悪してごめん。
……大好きだよ」


でも。
ロウの睦言は、いつだってアタシをとろかす。


キス、したい。


そんなことを思ってしまう。


ガーーッ


音を立ててドアが開いた。


「こっちだよ」


また優しく手をとると、ロウは奥に向かって歩き始める。


ーー続きは後で。


顔が熱い。
降り際に、小さく言われた気がする言葉。

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