弟、時々恋、のち狼
続きって……。

こうして夜風の中に出ると、少しは冷静さが戻ってくる。
キスなんて大胆なことを考えた自分が、ひどく恥ずかしい。
それなのに。

アタシは、つながった手をじっと見つめた。


このヒトのものになりたい。


前世がつながっていようと、なかろうと。

今のこの手が、アタシの気持ち。


夢の中の二人は、とても仲がイイのに、なぜかお互いを触れることだけには気を遣っていた。
それどころか、たぶん、誰にも触れようとはしなかった。

人間じゃなかったから……?


なぜか最近あまり夢を見なくなってしまったし、まだわからないことだらけだけれど、アタシたちは、何か、違和感があった。

今と昔に。
関係はもちろん、性格も、立場も。

それがどうしてなのか、知りたい気持ちはある。
でも、その気持ち以上に、知るのが恐ろしかった。


ラッラに訊こうと思っていたけれど……やめておいた方がいいのかもしれない。ここにきて、そう思う。


「ここ」


表札は出ていない。
まわりと変わらない、シンプルな焦げ茶色の扉。


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