弟、時々恋、のち狼
ガチャリ


ロウが鍵を開ける。

ついに、来ちゃった。

一気に緊張の波が押し寄せてくる。


「さぁ、どうぞ」


パチッと電気がつけられ、そろそろと足を踏み入れた。


「おカエりなさいませぇ」


やはりシンプルな玄関。
靴箱は備え付けがあるから何も出ていない。
広くはない玄関なのに、広く感じた。

正面にあるリビングらしき暗闇の奥で小さい光の玉が二つ、スィっと動く。
と、思うと、明るい廊下を転がるように、ラッラが走り出てきた。


「おカエりなさいませぇ」


相変わらず舌っ足らずなしゃべり方。
さっき何か聞こえたと思ったのは、幻聴ではなかったらしい。
くりっとした瞳でちょこんと座る姿が愛らしい。


「元気じゃんっ」


いつもと変わらぬ様子に、思わずため息がもれた。
ロウから、様子がおかしい、と聞かされていたのに。
元気なのはイイことだけれど、心配したぶん腹が立つ。


「あれぇ?ミィ?どうしてイッショですの?」


無邪気に小首を傾げる。
でも……。
このテンション。もしかして歓迎されてないかも。

なんなのよ。
一緒にいちゃ、悪い?

そんな言葉がついこぼれ落ちてしまいそうだ。

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