弟、時々恋、のち狼
「会いたがってたろ?だから連れてきたんだよ」
慣れているのか、アタシの不機嫌に気づいていないのか。ロウはあくまで穏やかだ。
「そんなこと、イいましたっけぇ?」
ツンとそっぽを向くと、先にスタスタとリビングに戻って行く。
なんか……可愛くない。
「ナニ、あれ……」
思わず声に出た。
「ね?変でしょ?」
靴を脱ぎながら、ロウが耳元で呟く。
変、っていうか……。
まぁ、確かに変なのかも。
アタシの部屋にいる時のラッラはナマイキだったけど、どんな時でも人懐こくて可愛かった。
「ミイのトコから戻ってきてからさ、ずっとあんな感じ。体調が悪いとかじゃなくて……気分にムラがひどいって言うか、わがままって言うか」
ま、とにかくあがってよ。
苦笑いを浮かべたまま、ロウがアタシの手をひいてくれる。
「お邪魔します……」
ラッラのせいでつかの間忘れていた緊張感が帰ってきた。
脱いだ靴を丁寧に揃え、つないだ手を頼りに進む。
男の人の部屋も初めてなら、一人暮らしの部屋も初めて。
ここにいると自分までちょっと大人になった気分になる。