弟、時々恋、のち狼
「適当に座って」


指さされたソファーに腰を下ろす。
先に丸くなっていたラッラがチラリとこちらを見て、嫌そうに、床の座椅子を尻尾でさしたが、気づかないふりをした。

ロウの部屋は、物が少ない。
きちんと手入れされている……とは言い難いものの、散らかってはいない。

場所をとっているものと言えばこの黒いソファーと、その前に置かれた天板がガラスの黒い机。オーディオとスピーカー、積み上げられたCD。それと、台に置かれたテレビくらいだ。
アタシの家のリビングは観葉植物やら写真やらぬいぐるみやら、いろんなものが飾られているけど、ロウの部屋は実用的なものばかりが目についた。


「どうぞ」


夕飯は家で食べなきゃならないし、気にしないで。
そう言ってはあるものの、小腹の空く時間。冷たいお茶とお菓子は、とても嬉しい。


「あ、これも」


買ってきたコンビニ袋から取り出したプリンも机に並べる。
チーズは、1こは包装をといてラッラの前に、残りは机に置いた。


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