弟、時々恋、のち狼
…………?


もはやほとんど消えてしまったミイの横顔の中、不思議なことに、その瞳の輝きだけが鮮烈に残っている。

すべてを見透かすかのような、深い瞳。


あ。


そういうことか。


泡がはじけるように、ふいにわかった。


入学式は校長の祝辞のただ中。少女は、真っ直ぐに顔をあげ、前を見据えている。

消えないのは--幻ではなかった。

あの瞳は、少女の瞳。



「あの時さ、ついに見つけたんだってわかった。
ラッラに言われてた通りだった。
……待ってたんだ。運命の出会いを」


つかの間、回想にふけっていたらしいロウが、アタシの頬をそっとなでる。


「運命の……出会い……?」


繰り返し、つぶやいてみる。

運命。

その言葉に胸が高鳴った。
アタシたちが今こうしていることは、定められていたことなのかもしれない。
アタシは、堂々と、ロウの隣にいても、イイのかもしれない。


恥ずかしい気持ちを我慢して、熱い視線と真っ直ぐ向き合う。


「この、目だ」


とろけるように甘く熱いささやき。
ロウの瞳は初めて会ったあの日のように、吸い込まれそうなほど澄んでいる。


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