弟、時々恋、のち狼
「そう。もっと自信をもってイイよ。いつもうつむいてるでしょ?せっかくの目が、見えない」


くっきりした二重。

アタシは……この目が好きじゃない。

キツすぎて。

普通、二重といえば、ぱっちりした可愛い顔の代名詞だ。でも、アタシの二重は、ほんの少しつり目気味なことと相まって、顔を勝ち気な印象にするだけ。
悪いコトじゃないのかもしれないがこんな性格だから……勝ち気に見られて得なことは何もない。


「前髪、切ったら?」


ロウがそう言ってくれるなら……少しはこの目が好きになれるかもしれない。
いずれ、の話しだけど。

アタシはやっぱり、アタシの顔が、好きじゃない。


「ほら、こうやってさ」


ロウの手がすっとアタシの前髪をなで上げて、おでこを出した。


ドキン


なんでアタシの顔はこんなすぐに真っ赤になってしまうんだろう……。
アタシの気持ちが、ロウにあっさり知られてしまう。

恥ずかしい。


「かわいいね」


クスッと笑い、そんなことを照れもせず言える、大人の、彼。
アタシの、彼。

胸が高鳴って苦しい。
切なく締めつけられるような、それでいて、甘く夢見るような、この気持ち。


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