弟、時々恋、のち狼
目、つむらなきゃ。


少しずつロウの顔が近づいてくる。


でも……目がそらせない。

いっそ……この優しい瞳に吸い込まれてしまいたい。


「いたっ!!」


何!?


もうすぐ……。思った瞬間、手の甲に突き刺さるような痛みを感じた。


「こら!ラッラ!!」


びっくりしているアタシの脇から、鋭い声がとぶ。

ひゅんっ

足元をすごい勢いで何かが通り抜けた。

まだ痛みの残る右手の甲を見てみると、ぽっちりと小さな紅い玉が浮いている。

ラッラ?

ひっかかれたのだ。……というより、爪先で刺されたのだ。
ようやく、理解する。


「大丈夫?」


廊下の方に逃げたラッラの後ろ姿をにらんでいたロウが、心配そうにアタシの手をとった。
傷を見て、短く悪態をつく。


「大丈夫……びっくりしただけだから」


「でも血ぃ出てるよ。消毒しとかないと」


「え……あっちょっと!!」


言うや否や、柔らかい唇がそっと傷口を舐めた。


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