弟、時々恋、のち狼
「ちょっ!!汚いよ!?」


抗議はロウに届かない。
慌てて手を引っ込めようとしても、見かけによらず強い力が、またしてもアタシの自由を制限する。

結局、ドキドキしながらも、なされるがまま、だ。


「……ラッラどうしちゃったんだろうね……っ」


とりあえず話題を変えなきゃ……と、思いついたままを口にしてみた。
声が上擦っているのが我ながら情けない。

でも、声にしてみると改めて、心配な気持ちが湧いてくる。

あの、ラッラの様子……。
確かに、おかしい。

痛いだのなんだのばかり言っているわけには、いかなさそうだ。


「ラッラらしく……ないよね」


いくら幸せでも。不謹慎だよ。

ラッラのことを思えば、ときめいてばかりなんて、到底、いられない。


「今までもこういうこと、あったの……?」


考え始めると、次第に恥ずかしさや緊張が薄れていく。

ロウも、アタシの言葉に体を起こし、考えこむように首を傾げた。
……だだし、手は、しっかりとつないだまま。


< 128 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop