弟、時々恋、のち狼
「いや、初めてだと思うよ。
……まぁ、最初の頃なんかはオレのが不安定だったから、気付かなかっただけかもしれないけど」


あの、小さくても気が強くて、気配りのある子猫を変えてしまったもの。

なんだろう。

ラッラは一体、今何を考えているんだろう。


「とりあえず動物病院、ってわけにもいかないしさ」


つないだ手から、ロウの心配が流れ込んでくるようだ。
アタシ以上に、ロウはきっと、ラッラに支えられてきたのだから。


「ごめん。
ミイの顔見ればアイツも元気になるかと思ったんだけど……余計な心配かけちゃったみたいだね」


何でも知っている大人なロウ。アタシはいつも、ドキドキしながらついて行くだけだ。
でも、そのロウが困ってる。
いくら鈍くたって、この笑顔がアタシを安心させるためのものだってことくらい、わかる。

何か、しなくちゃ。
甘えてばかりいられない。
アタシだって、二人の役に立ちたい。


「ちょっと、話してきてもイイ?」


甘やかな時間を過ごすためにここにきたわけじゃない。
改めて思い出す。

このまま帰ったら絶対に後悔する。
何しに来たのか、わからないから。

そんなの、嫌だ。


つないだ手が静かに放されるのを感じる。
けれど、アタシはそれを見ることなく立ち上がった。

ただ、床に置かれた手付かずのチーズをじっと見つめながら。




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