弟、時々恋、のち狼

きょうだいという表現はきっと正しくない。

我々は、二つで一つなのだから。


「姉上……」


喜びと悲しみの入り混じったような表情だ。
ロウの顔を見て、そう思う。

複雑な……なんて、人間くさい表情。


チクリ、胸が騒いだ。


「頼むから……二度と、人間になりたいなどと言わないで……」


あなたを失うことだけは考えたくない。


終わりのない長い生を、一緒に続けていきたい。


だから。

自分の使命をきちんと守って。
自分の運命を投げ出さないで。


たった一人の、私の仲間。


--耐えがたい。


唐突に踵を返した弟のその小さな一言が、妙に強く、心に残った。

覚えられないはずの、この心に。いつまでも……いつまでも強く。



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