弟、時々恋、のち狼
このところの晴天続きで水位が下がっているのだろう。乾いた泥のこびりついた石は思ったよりは渡りやすかった。
ツカサは細い柳の幹に寄りかかって、黙ってこちらを振り返る。
腕を組み目を細めて立つ姿は、なんだかとっても目立って見えた。
まぁ……こんなカッコイイ男の子なら、どこにいたって目立つんだろうけど。
なんなんだろう……?
何も言わずアタシを眺めるツカサに、気まずい思いが募る。
所在なげにモジモシと立つ自分が、さらに恥ずかしく思えてくる。
「あの……ごめんなさい。行く、ね」
ついて来いと言われたように思ったのは気のせいかもしれない。
ちょっとずつ後ずさる。
「何を怯えているのです?」
足元に視線を移したとたん、涼やかな声が響いた。
「あなたは堂々としているのが美しい」
…………やっぱりこの人……変。
ロウを好きだと感じた今も、淡い憧れは消え去らない。
それでも、どうひいき目に見ても、何かがおかしい。
「あなたに必要なのは、ヤツじゃない」
「ちょっ」
スッと目の前に立ったツカサにビクリとした瞬間、腕をつかまれた。
「離、して」
緊張なのか恐怖なのか、よくわからないけれどドキドキ脈打つ心臓を痛いほど感じる。