弟、時々恋、のち狼

ラッラに聞いてみたい。
あの子は女官として生きていた。アタシたちがなかなか区別できなかった官吏たちをちゃんと知っている。

思うものの、肝心のラッラは会話ができる雰囲気じゃあないし、そもそもロウにだって、このままでは近寄れない。


何とかしなきゃ。


「瀧川」


物思いの最中、突然名前を呼ばれ、ガバリと顔を上げた。


「保健委員だそうだな。保健室まで連いてけ」


古文の先生は、興味なさそうに、自分の前に立つ女の子を指差している。


「あ、はい」


あまり話したことのない、大木さん。
余程具合が悪いのか、真っ青だ。

慌てて席を立つと彼女の横に寄り添った。


「大丈夫?」


ゆっくり歩きながら話しかけると、大木さんはこくんと頷く。


「薬、忘れちゃって」


その言葉にピンときた。


「あ、わかるかも。アタシも薬きれると動けなくなるもん」


女の子って、毎月毎月、面倒だ。


「保健室に薬あるといいね」


確かアタシのカバンにも鎮痛剤が常備してあったはずだ。もしダメなら、それをあげてもいい。

うちはママもアタシも生理痛がひどいから、薬はできるだけ切らさないようにしている。
遺伝だから諦めるしかないとはわかっていても、辛いものはやっぱり辛い。

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