弟、時々恋、のち狼
…………はぁぁ。
これみよがしに思えるほどの、大きなため息。
穴があったら今すぐ入りたい。
呆れきったようなロウの顔。
アタシなんか、今すぐ消えちゃえばイイのに。
「…………やっぱり。
………………っていうか、今訊きたいのはそっちじゃないんだけどさ……。
ま、それも確かに気にはなるけどね」
やっぱりって……。一体、アタシはロウからどう思われてるんだろう。
妙に自嘲気味な様子に胸が痛む。
「ちょっとおでこ貸して」
コツン……
真っ赤になったアタシのおでこに、まるで熱でも計るかのように、ロウの額があてられた。
ぎゃ-!!
心の中で叫ぶ。
急にアップになったロウの顔に、頭の中が沸騰して倒れそうだ。こんなの、慣れるわけ、ない。
アタシたちはお互いに想いあっている。
でも、だからって何をするわけでもない。
人間になりたがっていたロウとミイ。アタシたちはその記憶を知っているけど、あくまで主人格は白羽先生と美風だ。
人間として普通の日常を、一緒に楽しんでいるだけ。
「……ん-……」
アタシにとっての5分は、実はほんの数秒。
何がわかったのか、ロウは難しい顔で、ふぅ、と腕組みをした。
「片割れ、ねぇ。なんなんだろう、アイツ」
いつの間にか、5時間目のあとに見せたような険しさは消えている。
かわりに、柔らかな眉間に、不可解な難問に挑む深い皺が、刻み込まれた。