弟、時々恋、のち狼
「……何したの、今?」
「え?
あぁ。記憶を見せてもらった」
事も無げなセリフに、あっけにとられた。
そんなこと、できたんだ。
思い返してみれば、前にもこんなこと、あった。
「変な術とかはかけられてないみたいだから大丈夫。安心したよ」
…………いや、そういう問題じゃなく。
晴れ晴れとした口調が、妙に悔しい。
記憶をのぞくなんて。
「エッチ!!」
ありえない。
いくらロウのチカラが観察のためだからって。
アタシの記憶まで覗くか!?
「信じらんないっ!!」
腹立たしさとあわせて、悲しくなってくる。
アタシ、信用されてないのかな……。
もしかして、今までも、のぞかれてた……?
「怒るなよ。
そんなことより、あのツカサってヤツだよ」
「そんなことって!!」
「ラッラと違ってオレの記憶にも定かじゃない」
「……帰る」
「宦官がたくさんいたせいかな…………って、え?」
「先生、今日、部活休みます」
ポカーンとしたロウの顔が、いつもなら可愛く思えるはずなのに、今はやけに、癪に障る。