弟、時々恋、のち狼
「そんなに気に入ったならラッラが江籐くんのとこに行けばイイじゃない」
もごもごと口の中だけでつぶやいた。
なんだってこう、厄介事っていうのはまとめてやってくるのだろう。
「ラッラって……ずいぶん昔と違うよね……」
「ナニかおっしゃいました?」
ため息まじりの独り言は耳敏く聞き咎められ、丸い瞳がジロリとこちらを見た。
もはや、意地悪な小姑って感じ。
「いえ。何も」
あの可愛いラッラはどこに行ってしまったのやら。
かつて、このうえなく愛しく思っていた存在にこんなに疎まれるなんて。
情けないし、悲しいし。
……記憶なんか関係なく今のアタシの感情だけからすれば、はっきり言って、ただただ、小憎たらしいし。
昔とは……まぁ、アタシだって別物だから、お互い様ではあるものの。
よく見るお話しと違って、前世の自分イコール今の自分、というわけではナイらしい。
記憶はあるけど、多少、人事。じっくり見て隅々まで覚えているドラマみたいなものだ。
だから、きっと、ラッラだって……。