弟、時々恋、のち狼
「……何言ってるの?」
先の見えない話し。
できる限り冷静な、訝しげな声が出ていることを祈る。
「制御、できないんでしょう?」
ギクリ。
肩が揺れた。
「知りたい?どうすれば自分の力を抑えられるか」
そばで見ていたのだから当然と言えば当然。
ツカサは……全部、気づいてる。
フッと表情を和ませ、ほんの少しだけ体を離すと、丁寧な手つきでアタシの腕を取り傷口を確かめた。
「例えば、だ」
そっと、傷に触れない程度のところで、ツカサは手をゆっくり滑らせる。
「え……」
驚きを超えて。
あまりのことに、何が起きたのか理解できない。
「これもミフウの力だよ」
傷が、跡形もなくきれいに消えていた。
「破壊と再生。どちらも兼ね備えている」
「再生……?直せるって、こと?」
「違う。新しく創れるということだ。前と同じ物も、別の物も」
難しくてよくわからない。
けれどアタシは、ツカサの言葉に、すべてを好転させられるかもしれない、希望を微かに感じた。
だって、アタシの腕はもうまったく、痛くない。