弟、時々恋、のち狼

考えてもみなかった。


「怒ったり苛立ちを抱えたりすることさえなければ、また話しは違う。でも今のミフウには実際、それは不可能だ」


確かに。それは認める。
アタシは最近、妙に気が立っている。

ミイには感情のゆらぎがなかった。
このアタシには、やたらと、ある。


「どうすれば……?」


そのコントロールができるのか。


「そんなに怯えた顔をする必要はないよ」


自信に満ち溢れて見えるツカサが、今だけは頼もしい。


「オレがコントロールしてあげる。そばにいればいい。自分の意志で」


「そんなこと……」


強制ではなく。アタシが、好んで、ツカサといるということ。
ロウを差し置いて。


見られたらどうするの?


コントロールなんてそんなこと……

ホントに、できるの?


「信用してない?
さっき見たのに?」


アタシはもう一度、傷ついていたはずの腕を見た。

万が一にも……ヒトを傷つけるのは、怖い。

この妙な力が……怖い。


ツカサのそばにいればそれが制御されるなら。
どうせ、今だってなんだかんだで、ツカサはしょっちゅうアタシのそばにいる。

それがさらに少し増えたところで……周りは、いちいち気に留めるだろうか。
アタシが好んでツカサと一緒にいたことはない。一緒にいたいと思ったことも。
けれど、はたから見れば、どっちだって同じ。
ならば。



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