弟、時々恋、のち狼
今までとそれほど変わらずにすむ。
変わるのは、アタシが進んで一緒にいるようになるという、心の中のできごとだけ。
なら。
「……お願い……もう何も壊したくない」
記憶はあっても。
アタシはミイとして未熟すぎるから。
「そばを離れない、と?」
満足そうに、甘い笑みをたたえるツカサに、小さく頷く。
「いい判断です、我が君」
口調だけは以前のように。態度は、まるで小さな子どもを相手にしているかのように。
アタシの頭をくしゃりとなでた思いがけず優しい仕草に、ドキリと顔が赤くなる。
「じゃあそろそろ戻ろう」
気づいているだろうに、ツカサはそんなアタシにお構いなしで、さっさと立ち上がり、歩き出した。
「あっ……ちょっ」
アタシは、ロウが、好き。
なのに、ツカサと一緒にいなきゃいけない。
そんなの……。
慌ててツカサの背中を追いかけながら、アタシは、胸の中に芽生えてしまったツカサへの親しみを、気のせいだと、錯覚だと、必死の思いで打ち消した。
この安心感も……制御できるがゆえの安心感だと……。
かすかな喜びも……壊さずに済むゆえの喜びなのだ、と……。