弟、時々恋、のち狼
「素直になりなよ。さっきはかわいかったのにな」


わざわざ人を赤面させるあたり、ホント、意地が悪いと思う。


「誰が!!」


噛みつくように返すと、楽しそうに笑う。

バカ。

アタシは逃げるように商品棚に目を戻し、大して興味もないキッチングッズを手に取った。


イヤなヤツ。


なのに、いると、ほっとする。


………………バカは、……アタシ、か。


はぁ。ため息が漏れた。


このところ、ロウの家に行っていない。
出張が終わって帰って以来、ラッラも来ないし。

学校ではもちろん顔を合わせる。
でも、ロウは職員会議やら何やらが忙しいみたいで、アタシとは、少し仲の良い教師と生徒、って程度にしか話しをする時間がもてない。
メールや電話はするものの……。

一時ほどの睦まじさはなく、日々に紛れてしまっていた。


まぁ、アタシが悪いんだよね。


反省することが、多すぎる。
ツカサと一緒にいることはとっくにみんなに知れ渡ってるし、ロウにだって見られてる。
いくら、付きまとわれてるだけだって思ってくれてたとしても、イイ気はしないだろう。

実際のことなんて、絶対言えない。

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