弟、時々恋、のち狼

あとは歩いて帰るだけ。
心を穏やかに。
余計なことを考えず。

街中は人が多い分、何が起こるかわからなくて怖いけれど、ここからならいつもの道。大した心配はない。

アタシ一人で、何とかできる。


じゃあ、ここで。


そう言おうと口を開きかけた、その時。


「そこでいいのか?」


ツカサの方から、訊いてきた。


「うん」


「そうか。じゃあ、入ろう」


「……は?」


噛み合わない会話に、首を捻る。

入る?


と。


ツカサの視線の先。


「あ……」


「何してる?」


もう自動ドアに半分ほど足を踏み入れて、ツカサは不思議そうに振り返る。


「いらっしゃいませー」


店員の明るい声に、しまった!と思った。

ちょうどアタシの立ち止まった場所。
そこは、カフェの入り口だった。

そこでいいのか、は別れのきっかけじゃなく……。


「いや……えーと……」


「早く来いよ」


もしかして、アタシが誘ったと思われてる?


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