弟、時々恋、のち狼
「そういうつもりじゃあ……って、ちょっと!!」
サーッとしまる、ガラスの扉。
ヒトの話しなんて聞く耳をもたないのか、ツカサはさっさと店内に入ってしまった。
「もうっ」
このまま帰ってしまう手もある。けれど……アタシが連れ出した手前、気が引けた。
……何より、後が怖いし。
「すぐ帰るからね!!」
仕方なしに、後に続いた。
「遅い」
明るい雰囲気の店の中を見回すと、窓際の奥まった席にツカサの姿を見つけた。
全国展開の手頃なカフェにしか入ったことのないアタシは、ちょっと緊張しながら正面に座る。
あちこちにハーブの花が置かれたおしゃれな店内は、ゆったりとしたボサノバが流れていて、焼きたてのお菓子の匂いがする。
大学生くらいの女のお客さんや若いカップルが数組、和やかに談笑していて、アタシも次第に気分が落ち着いてきた。
「お待たせ致しました」
迷いながらメニューを見ていると、エプロンの可愛い店員さんがお盆を持ってくる。