弟、時々恋、のち狼

カチャカチャと小さな音をたてながら、ツカサの前にコーヒーを、アタシの前にはオレンジの浮かぶ紅茶を、置いた。


「頼んでたの？」


言ってくれればイイのに。

文句半分。
驚き半分。

フッと目を細めて笑う、柔らかい仕草に、ドキリとする。

なんで、アタシが頼むものがわかったんだろう。
ちょうど、これに決めたところだった。


「……コーヒー、好きなの？」


誤魔化すように、話題を変えた。

でも、ブラックコーヒーを口に運ぶ姿は、なんだかとても幸せそうで。


「香りのイイものが好きでしょう？気が合う」



優しい眼差しに、またしても、頬が熱くなる。
今日のツカサは、いつにも増して、変だ。


「……アタシ、コーヒーは飲めないよ……」


赤くなった顔を隠すようにカップを口元まで上げた。


「酸味？」


なんでツカサは、こんなにも簡単にアタシのことを言い当てるんだろう。


「別に驚くことじゃない。ミフウのことならなんでもわかるよ。
誰よりも、理解できる」


「……単純でわかりやすいってこと？」


「いや。オレがそれだけミフウ一人を見てるということ」


元々強引で、自分勝手なことばっかり言うヤツだけど。