弟、時々恋、のち狼

『これからうち、こない?』


ロウだった。

今日は、吹奏楽の大会の打ち合わせで、1日仕事だって言っていたのに。
だからアタシは、仕方なく……。


『うん。早く終わった。会いたい』


会いたい。

その一言で、アタシの中の寂しさと不安が消し飛んだ。

アタシも、ロウに会いたいよ。

さっきまでの迷いはどこへやら。
胸がキュッと締めつけられる。


『待ってるから』


ハートの絵文字のついたメールに、嬉しくて保護をかけた。

ツカサには悪いけど、すぐ、行こう。
アタシのいたい場所は、やっぱりロウの隣だ。


「おかえり」


せっかくの紅茶、一口だけ飲もうかな。
貧乏性でついそんなことを思いながら席に戻ると、ツカサが静かに迎えてくれる。


「どうしたの、これ!?」


相変わらず艶やかな眼差しを避けるようにテーブルを見たアタシは、驚きに目を見張った。

いくつものケーキに、パフェ。
それと、小さなオープンサンド。


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