弟、時々恋、のち狼
ツカサが怖い……?
うん、怖い。
……なのに、ちょっと違う気もする。
怖いだけ?
そうじゃない。
たぶん、戸惑い、の方が近い。
少し考えてから小さく首をふると、なおもツカサはアタシの顔を覗き込んだ。
「なら、どうしてそんなに怯えるの?堂々とできないはなぜ?」
「…………」
性格、かな。
別に怯えてるつもりはない。
けれど、女友達といる時や、ロウといる時とは違う。
警戒心、に近いかもしれない。
…………警戒。
ということは、やっぱりアタシはツカサが怖いんだろうか。
「アタシは……」
ツカサじゃない。
ツカサが怖いんじゃない。
今、気付いてしまった。
アタシは、この気持ちが変わるのが怖い。
ツカサの強力な磁力で、アタシの気持ちがロウから離されてしまいそうで、怖い。
「アタシ…………ごめんね、帰る」
そうだ。
このままじゃいけない。
ロウのところにいかなくては。
過去の使命を捨ててまで、ミイを愛したいと願ったロウのところへ。
一緒に生まれ変わった、魂の半身のところへ。
アタシは、ミイなのだから。
ツカサは、どんな顔をしているのだろう。
見ることなんかできない。
早く、離れなくちゃ。