弟、時々恋、のち狼

「あ……おはよ」


なんだ……詩織かぁ。

恐る恐る振り向いて、中学からの友人の姿に胸をなで下ろす。

こんなところに昨日の彼がいるはずがない。思ってはいても、どうしても落ち着かない。


「ねえねぇ、聞いた!?」


アタシの不審な動きに気付く気配もなく、詩織はキャアキャアとはしゃいだ様子で隣に並んだ。


「何?」


元々は顔見知り程度だったアタシたち。受験後、同じ中学からこの高校に進む女子は二人だけだと知り、急速に仲良くなった。
クラスは違うけれど、入学二日目の今のところは、詩織がアタシの唯一の友達だ。


「美風のクラス、今日転入生入るんだって!」


「は?いまさら?」


大ニュース!とばかりの詩織の言葉に、アタシは思わず目をまるくした。

昨日の入学式には出ずに、なんで今日。
昨日から入ればイイのに。


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